60クラブが参戦、Jリーグ初の「環境順位表」— 2026年秋に公開されるSPLスコアの全貌
Jリーグが2025年4月、アジア初となるSport Positive Leagues(SPL)への参画を発表した。60クラブの気候アクションが12項目で数値化され、2026年秋には順位表が公開される。日本財団から3年で11.9億円の助成を受け、上位クラブには傾斜配分される仕組みだ。プレミアリーグ発祥のこの国際基準は、日本のスポーツ界にどんな変化をもたらすのか。
2025年4月22日、Jリーグは日本のスポーツ界に歴史的な一歩を刻んだ。世界5番目、アジアでは初となる「Sport Positive Leagues(SPL)」への参画である。プレミアリーグやブンデスリーガが先行するこの国際基準は、クラブの気候アクションを12項目で数値化し、順位表形式で公開する仕組みだ。2026年秋、60クラブの取り組みが初めてスコア化される。日本財団から3年で11.9億円の助成を受け、上位クラブには傾斜配分が行われる。「猛暑で子どもたちのプレー環境が奪われる」現実を前に、Jリーグは「環境の順位表」という新たな競争軸を手にした。
プレミアリーグに続く5番目、Jリーグが挑む「環境の順位表」
2025年4月22日、Jリーグは東京都内で開いた理事会において、気候変動対策を数値化する国際イニシアチブ「Sport Positive Leagues(SPL)」への参画を正式に決定した[2]。既にイングランド・プレミアリーグ、EFLチャンピオンシップ、ドイツ・ブンデスリーガ、フランス・リーグアンの欧州4リーグが参画しており、Jリーグは世界で5番目、アジアでは初の参画となる[2][3]。野々村芳和チェアマンは発表の席で「スポーツの土台となる自然環境が、以前とは確実に変化している。子どもたちのプレー環境が制限され、週末の楽しみが奪われかねない」と危機感を語り、サッカー文化を守るための行動を呼びかけた[8]。
SPLは2018年に英国で創設され、サッカークラブが実施する気候アクションを12項目で数値化し、スコアと順位をリーグテーブル形式で公開する仕組みだ[2][3]。試合会場や施設のエネルギー効率、再生可能エネルギーの利用率、リサイクルや廃棄物削減の進捗、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理、ホームタウンとの連携、選手への環境教育の推進など、スポーツ界特有の環境パフォーマンスを多角的に評価する[2][4]。創設者のクレア・プール氏によれば、2019年11月にBBCニュースで取り上げられたことで注目が一気に高まり、「分厚いレポートは誰も読まない」という指摘を受けて順位表形式が採用されたという経緯がある[8]。
Jリーグは2025年を準備期間と位置づけ、2026年1月から始まる移行期の特別大会から正式にエントリーする[2][3]。2025年中にはSPLとJリーグの間でヒアリングを重ね、12項目の評価基準マトリクスをベースにしつつJリーグ独自の評価基準を設定する[2]。並行してJ1からJ3までの全60クラブに向けた「Jリーグ気候アクションハンドブック」を2025年6月頃に発行し、一般にも公開する予定だ[2][3]。初回のエントリー対象期間は2026年1月から6月までの半年間となり、各クラブが取り組んだ気候アクションがSPLへ報告される[8]。
そして2026年秋を目途に、SPL独自のスコアリングシステムによる定量分析が行われ、エネルギー、廃棄物、交通といったカテゴリー別に加重を設けて総合点が算出される[2][3]。初回は60クラブのうち上位20クラブのスコアと順位が、活動内容とともにSPL公式サイトで公表される[8]。Jリーグ執行役員の辻井隆行氏は「完璧でなくても、知識がなくても、未来のために声を上げる。Progress over perfection(完璧さよりも前進)という言葉を胸に、そんなJリーグでありたい」と語り、挑戦の意義を強調した[8]。年間来場者数1250万人、国土の87%をカバーする60クラブのネットワークを持つJリーグにとって[2][4]、この「環境の順位表」は地域社会への波及効果を生む起点となる。
12項目で測る「気候アクション」— 再エネ40%、廃棄物焼却率50%の具体的目標
SPL参画におけるJリーグの評価は、12の指標カテゴリーで構成される独自のマトリクスによって測定される[1]。最も比重が大きいとされるのが「再生可能エネルギー」で、クラブは再エネ比率40%以上を目標に掲げることが求められる[1]。単なる電力契約の切り替えだけでなく、複数の関係者と継続的に連携・協業できる社会システムの構築が評価ポイントとなる点が特徴的だ[1]。「エネルギー効率」では、方針・戦略の策定、モニタリング体制、外部評価実績などを体系的に定め、実際に取り組んでいるかが問われる[1]。スタジアム、クラブハウス、練習場、クラブ事務所といった全施設が対象となり、照明のLED化や空調の効率化といった個別施策だけでなく、エネルギーマネジメント全体の設計力が試される[1]。
廃棄物管理では、ゴミの焼却率50%を目標値として設定し、「廃棄物管理/リサイクルプログラム」の導入や3R(リデュース/リユース/リサイクル)に体系的に取り組むことが評価される[1]。使い捨てプラスチックについては、来場者が利用するエリアからスタッフ専用エリア、キッチンに至るまで除去を促し、代替品への移行を段階的に進める計画性が問われる[1]。水の効率利用では、節約・削減・再利用に関するポリシーを導入し、実際の水使用量削減や再利用実績を示す必要がある[1]。プラントベース食品調達では、環境の観点から持続可能性基準を満たす、または客観的根拠や意図的努力を踏まえた調達を行った食品・食材での提供が評価対象となる[1]。これらは単なる努力目標ではなく、測定可能な数値として報告が求められる設計だ。
「環境負荷の少ない移動手段」では、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理が重視される[2]。環境負荷の少ない移動ポリシーを目に見える形で提唱し、公共交通機関の利用促進、シャトルバスの運行、駐車場の制限といった具体的施策を実施しているかが問われる[1]。生物多様性については、方針・戦略を有するだけでなく、クラブ内に限らず地域コミュニティに行き渡らせることで、自然と地域の生態系支援に取り組む姿勢が評価される[1]。スタジアム周辺の緑地管理、在来種の植栽、生物モニタリング活動など、ホームタウンの生態系保全への貢献が具体的な評価軸となる[1]。
教育とエンゲージメントも重要な柱だ。全ての選手(男女、アカデミー選手含む)に対して、PR目的ではなく環境の持続可能性や気候変動に関する教育プログラムを実施することが求められる[1]。これは単発のイベントではなく、継続的なカリキュラムとして組み込まれているかが評価対象となる[1]。「コミュニケーションとエンゲージメント」では、クラブの公式HP上にサステナビリティのWebページを設置し、ファン・サポーターの環境意識や行動変化を促す取り組みが評価される[1]。持続可能な調達では、クラブが取り扱うすべての物品について、環境・倫理・社会的責任等を含む「持続可能な調達方針」を定め、実践することが求められる[1]。ユニフォーム、グッズ、食材、清掃用品に至るまで、サプライチェーン全体での環境配慮が問われる設計だ。
最初の項目である「ポリシーとコミットメント、レポーティング」では、サステナビリティ全体や環境に係る方針・戦略が含まれており、Scope1-3の排出量等の客観的な情報を定め公表していることが評価される[1]。ここで言う「方針/ポリシー/戦略」は、長期ビジョン、定量・定性の目標設定、活動計画の3要素を含むものと定義されている[1]。つまり単なる理念表明ではなく、数値目標と実行計画を伴った戦略文書が求められる。これらの指標は、SPL独自のスコアリングシステムで定量分析され、エネルギー、廃棄物、交通などカテゴリー別に加重配分して総合点が算出される[2]。加重配分の詳細は非公開だが、再エネやエネルギー効率など直接的なCO2削減効果が高い項目の比重が大きいとされる。
評価の対象施設は、スタジアム、クラブハウス、練習場、クラブ事務所、ショップなど多岐にわたるが、最低要件として「スタジアム、クラブハウス、クラブ事務所」の3施設が設定されている[1]。これにより、J3クラブのような小規模組織でも参画可能な枠組みが設計されている。Jリーグ版SPLは国際的基準を踏襲しつつ、日本と欧州で推進される社会システムや基準が異なる場合には、日本国内で推奨される指標を採用している[1]。たとえば再エネ調達の方法や廃棄物処理の基準など、日本の法制度や電力市場の実態に合わせた調整が行われている[1]。これにより、国際的な客観性を保ちながら、日本のクラブが実行可能な評価フレームワークが構築されている。
日本財団3.7億円の助成金と傾斜配分— 「競争」でなく「共創」を促す経済設計
日本財団は2025年度から3年間で総額11.9億円を拠出し、Jリーグの気候アクションを支援する。初年度となる2025年は準備期間として3.7億円が投じられ、うち2.4億円が全60クラブに対し上限400万円の均等配分で交付される[2][3]。これは単なる助成金ではなく、「Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度」という新たな枠組みとして制度化されたもので、SPLで定義される12項目の気候アクションを推進するための原資となる[3]。この助成金を活用し、各クラブは再生可能エネルギーの導入、廃棄物管理、環境教育プログラムなど、具体的な取り組みを2025年4月から2026年3月まで実施していく[2]。スタート時点では経営規模や知見に差があるクラブ間の格差を考慮し、まずは全員が同じスタートラインに立てるよう均等配分が選ばれた。
しかし2026年秋、初回のSPLスコアが公開された後は、制度は大きく転換する。ランキング上位のクラブにより多くの配分を行う「傾斜配分方式」が導入され、取り組みの質と結果が直接的に経済的インセンティブと連動する仕組みへと進化するのだ[2][3]。これはプレミアリーグをはじめとする欧州リーグが実証してきた「可視化と競争が行動変容を加速する」という知見に基づく設計である。ただし、Jリーグが強調するのは「競争」よりも「共創」の姿勢だ。スコアが高いクラブの事例は積極的に共有され、リーグ全体の底上げを促す文化醸成が目指されている[2]。つまり傾斜配分は、個別クラブの努力を評価しつつ、優良事例の横展開を促進する触媒としての役割を担う。
プレミアリーグでの導入事例は、この仕組みの有効性を裏付けている。リバプールFCは2021/22シーズンにペットボトル回収率をわずか25%から99%へと劇的に向上させた[8]。サウサンプトンFCは初回SPLで18位という結果に危機感を抱き、その後組織を挙げて取り組みを強化。現在ではリーグを牽引する存在へと変貌を遂げた[8]。最も象徴的なのは、SPL導入後にプレミアリーグ全20クラブにサステナビリティ担当者が配置されるようになったという事実だろう[2]。これは単なる環境対策ではなく、クラブ経営における新たな専門職の誕生を意味する。可視化された評価基準が人材投資を正当化し、組織構造そのものを変えたのである。
Jリーグではブリストル・シティFCのピーター・スミス氏の事例が注目を集めている。同氏は2025年1月のJリーグサステナビリティカンファレンスで、「サステナビリティは経営を圧迫するコストではなく、クラブのアイデンティティを強固にし、新たな収益を生み出している」と断言した[8]。同クラブはエネルギーや水の使用削減により直接的なコスト削減を実現しただけでなく、環境配慮型の商品に対してファンが「10ペンス高くても」購入する姿勢を確認。その結果、世界的な大手銀行スタンダード・チャータードとの新たなパートナーシップ構築にも成功した[8]。傾斜配分方式は、こうした経営的成果をさらに後押しする資金として機能することが期待されている。単なる善意の表彰ではなく、ビジネスとしての合理性を持った経済設計なのだ。
日本財団の笹川順平理事長は、「Jリーグと全国に広がる60のチームは、地域に密着し地域の課題を解決するパッションと技術を持つ、数少ない団体」と評価し、長期的なコミットメントを表明している[8][9]。3.7億円という初年度の規模感は、60クラブ全体で見れば大きな額だが、1クラブあたりで見れば決して潤沢とは言えない。だからこそ、2026年秋以降の傾斜配分が持つ意味は重い。成果を出したクラブにより多くの資金が再投資されることで、気候アクションが単発のイベントではなく、持続可能な経営の柱として定着していく道筋が描かれている。Jリーグ執行役員の辻井隆行氏が強調したのは「Progress over perfection(完璧さよりも前進)」という言葉だ[8]。この助成金制度と傾斜配分の組み合わせは、まさにその理念を体現した経済設計と言えるだろう。
「サッカーができなくなる未来」への危機感— スクール65クラス中止の現実
野々村芳和チェアマンが理事会で語った危機感は、抽象的な警告ではない。「猛暑、豪雨で子どもたちのプレー環境が奪われる現実」[4]という言葉の背景には、Jリーグの現場で既に顕在化している深刻な事態がある。2026年1月28日、東京・青山の国際連合大学で開催された「サステナビリティカンファレンス2026」では、あるJクラブから衝撃的な報告があった。ジェフユナイテッド市原・千葉の高橋薫取締役は、昨夏の猛暑と雷雨により、クラブ主催のサッカースクールが夏季3カ月間で65クラスも中止に追い込まれたと明かしたのだ[8]。これは単なる天候不順ではなく、子どもたちの育成機会そのものが気候変動によって失われつつある現実を示している。
辻井隆行執行役員は、この状況が加速度的に悪化していることを数字で裏付けた。「2015年にパリ協定で1.5℃目標に合意したが、この10年で状況は加速度的に悪化している。過去3年間だけでも最高気温記録を次々と塗り替えている」[7]と指摘する。気候科学者の言葉を引きながら、辻井氏は「誰か1人が勝って誰かが負けるというものではなく、全員が勝つか、全員が負けるか」という気候変動の本質を強調した[7]。つまり、一部のクラブだけが環境対策を進めても意味がない。サッカー界全体、そして社会全体で取り組まなければ、プレー環境そのものが失われるという切迫した危機感がある。
パネルディスカッションに登壇したセレッソ大阪の宮島武志副社長は、「未来の子どもたちにサッカーができる環境を残す」という理念のもと、組織的な意識改革を進めていると語った[8]。社員や選手全員がサステナビリティ検定を受験し、スタジアムグルメでのプラスチック削減状況の見える化や、生ゴミから肥料を作って野菜を育てる取り組みなど、ファンに見える形でのアクションを展開している[8]。これは単なる環境配慮ではなく、クラブが地域社会に対して「サッカーができる未来を守る責任者」としての役割を引き受けた姿勢の表れだ。
千葉の事例はさらに具体的だ。高橋取締役は、スクール中止という経営に直結する影響を受けたことが、取り組みを加速させるトリガーになったと明かした[8]。千葉市と連携した割り箸の回収・再燃料化、親会社のJR東日本と協働した電車利用促進のデジタルスタンプラリーなど、自治体・企業を巻き込んだ実践的な施策を次々と展開している[8]。「J1に上がった今年も実施したい」という言葉には、環境対策が一時的なキャンペーンではなく、クラブ経営の中核に組み込まれていることが読み取れる。こうした現場発の危機感と行動こそが、SPL参画という全国規模の取り組みを支える基盤になっている。
「順位表」が生むファンの力— BBCも注目した可視化の威力
2019年11月、BBCニュースが英プレミアリーグのサステナビリティ順位表を報じると、サッカーファンの間で大きな反響が巻き起こった。SPL創設者のクレア・プール氏は当時を振り返り、「BBCから『分厚いレポートは誰も読まない』と言われ、リーグテーブル(順位表)形式に辿り着いた」と経緯を説明する[7][8]。専門性の高いサステナビリティ報告書は、せいぜい企業のCSR担当者が目を通す程度で、ファンや地域住民には届かない。しかし順位表という形式に変換した瞬間、スポーツ文化に深く根づいた「競争」と「比較」の文脈が生まれ、環境活動は誰もが語りうる共通言語になった[7]。プール氏が「サステナビリティの取り組みを可視化し、目標水準を高めよう」とクラブに提案したのは2018年。その翌年、BBC報道を機に各クラブのファンはSNSで自クラブの順位を議論し、改善を求める声を上げるようになった[8]。
可視化がもたらした変化は数字にも表れている。リバプールFCは2021/22シーズンにペットボトル回収率25%だったが、翌シーズンには99%まで急上昇した[8]。かつてSPLで18位に沈んだサウサンプトンFCは、その結果を「恥」ではなく「改善の出発点」として受け入れ、いまでは環境対策のリーダー的存在へと成長した[7][8]。プレミアリーグでは現在、全20クラブにサステナビリティ担当者が配置されるまでになり、SPLが組織体制の変革を後押しした格好だ[8]。順位表が生み出したのは、単なる競争ではなく「自クラブの取り組みを誇りに思う」というファンの当事者意識である。スタジアムで応援するサポーターが、環境活動の主体としてクラブに問いかけ、自らも行動を変える——そのサイクルが、数値の改善を駆動している。
プール氏は「自分のクラブの取り組みを誇りに思うファンの熱量は、パートナー企業にとっても魅力。サステナビリティをビジネスの武器にすべき」と強調する[7][8]。ブリストル・シティFCのサステナビリティ責任者ピーター・スミス氏も、同様の視点を持つ。彼のクラブは英2部相当ながら、2022/23シーズンにイングリッシュ・フットボール・リーグ(EFL)全72クラブ中2位を獲得した[8]。スミス氏は「容器の価格が10ペンス高くても、妥当な理由があればファンは納得して購入してくれる」と語り、"正しくないことはしない"という基本理念がファンの信頼を獲得し、世界的大手銀行スタンダード・チャータードとのパートナーシップ構築につながったと明かした[8]。環境への姿勢が、クラブのアイデンティティを強固にし、新たな収益源を生み出す——そのロジックは、Jリーグクラブにとっても示唆に富む。
順位表がもたらす最大の価値は、透明性の確保にある。ファン・サポーター、メディア、自治体、パートナー企業といった関係者が、客観的な情報に同時にアクセスできる状態が生まれることで、クラブの環境貢献が地域からの信頼獲得につながる構造が整う[7][8]。Jリーグの辻井隆行執行役員は「社会全体の中で見ると、Jリーグクラブが実際に削減できるCO2排出量はごく小さいかもしれない。ただし、Jリーグには"発信力"がある。年間1350万人も来場していただいてるファンやサポーター、自治体、学校、金融機関、そして企業の皆様と一緒に、社会システムを変えることに力を使うのが大事だと思っている」と語る[8]。順位表という装置は、専門家だけが理解できる環境指標を、誰もが関心を持てる「ランキング」へと翻訳する。その翻訳が、地域社会全体を巻き込んだ行動変容の起点となる。
プール氏は「重要なのは順位の優劣ではなく、どこに改善余地があるか、どのクラブの実践が参考になるかを可視化し、学びの循環をつくること」と述べ、SPLの究極的な目標は「いつかクラブのサステナビリティが"当たり前"になり、順位表が不要になる状態を目指している」と語った[7]。Jリーグが2026年秋に初回スコアを公開する時、60クラブの順位は単なる成績表ではなく、日本全体の気候アクションを加速させる「共通言語」となる。ファンがスタジアムで見上げる順位表の隣に、もう一つの順位表が並ぶ未来。そこでは、勝ち点と同じ熱量で、再エネ比率やプラスチック削減率が語られるようになるだろう。
2026年秋、初回スコアが日本のスポーツ界を変える— 世界標準との対話の始まり
# 2026年秋、初回スコアが日本のスポーツ界を変える— 世界標準との対話の始まり
2025年6月、Jリーグは「Jリーグ気候アクションハンドブック」を発行する[2]。このハンドブックは、60クラブがSPLの評価基準や12項目の具体的な進め方を学ぶための準備期間の核となる文書だ。単なる内部資料ではなく、一般にも公開される予定であり[3]、地域の自治体やパートナー企業、さらには他競技のスポーツ組織にとっても、気候アクションの実践的な手引きとして機能することが期待されている。Jクラブの担当者たちは、このハンドブックを参照しながら、SPL策定のマトリクスをベースとしつつJリーグ独自に設定された評価基準への理解を深めていく[2]。2026年1月から始まる移行期の特別大会までの約7カ月間が、日本のサッカー界にとって「世界基準の気候アクション」を内製化するための試行期間となる。
2026年移行期の特別大会までの取り組みがSPLに報告され、2026年秋を目途に、初回となる評価基準に基づくスコアと順位が初めて提示される[2][3]。この瞬間、Jリーグは世界のスポーツリーグと比較した「現在地」を可視化することになる。初回の公表では上位20クラブが発表される予定であり[8]、プレミアリーグやブンデスリーガなど欧州4リーグの先行事例と並ぶ形で、日本のクラブの取り組みが国際的なプラットフォーム上で評価される。これは単なる順位の公表ではなく、Jリーグ全体の気候アクションが「世界標準との対話」に正式に参加する瞬間を意味する。BBCが取り上げたSPLの順位表形式は、分厚いサステナビリティ報告書では届かなかった層—ファン、メディア、企業—に対して、クラブの環境貢献状況を直感的に伝える力を持つ[7]。
野々村芳和チェアマンは、2026年1月のサステナビリティカンファレンスにおいて、SPL参画の経営的意義を明確に語った。「社会問題や環境問題にどう向き合うか。そこからパートナー企業との関係性をより深めることもできますし、新しいパートナーとの結びつきにもつながります」[7][8]。この発言は、気候アクションを「コスト」ではなく「価値創出の機会」として位置づけるJリーグの戦略を示している。実際、英ブリストル・シティFCでは、サステナビリティへの取り組みが世界的な大手銀行スタンダード・チャータードとのパートナーシップ構築につながった事例がある[8]。2026年秋のスコア公表以降、Jリーグはランキング上位のクラブがより多くの配分を得られる「傾斜配分」を導入する[2]。この経済設計は、クラブが気候アクションを経営の中核に組み込むインセンティブとして機能する。
辻井隆行執行役員は、カンファレンスの締めくくりで「Progress over Perfection(完璧より前進)」というフレーズを繰り返し強調した[7][8]。これは、SPL視察時に英国で頻繁に耳にした言葉であり、Jリーグが目指す姿勢を象徴している。「完璧でなくても、知識がなくても、未来のために声を上げる。そんなJリーグでありたい」[8]。この哲学は、初回スコアが低いことを「失敗」ではなく「改善の可能性の大きさ」として捉える文化を育てる。実際、プレミアリーグのサウサンプトンFCは初年度18位からスタートしたが、その事実を現状直視のための「データ」として活用し、今やリーダー的存在へと成長した[7]。辻井氏はまた、「地域資源を活かしながら、脱炭素に向けた活動が広がり、自然環境の保全や再生を推進する地域のハブとして、Jクラブが地域からより信頼される存在になることを目指す」とも語っている[2][3]。2026年秋の初回スコア公表は、ゴールではなく、60クラブが共に学び合う長い旅路の出発点なのだ。
参考文献 / Sources
https://www.jleague.jp/climateaction/spl/
https://www.jleague.jp/sp/news/article/30781/
https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/article/15508
https://www.nikkansports.com/soccer/news/202504220000906.html
https://esgjournaljapan.com/domestic-news/45334
https://www.football-zone.net/archives/589452
https://www.jleague.jp/climateaction/report_sustainability_conference_2026.html/
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