Business

年間932tCO₂削減──千葉ロッテとZOZOマリンが示す、プロ野球スタジアム脱炭素の現在地

2021年、千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムはスタジアム電力を100%再エネ化し、年間約932tのCO₂削減を実現した。Jリーグでは環境対応が加速する一方、プロ野球ではまだ希少な事例だ。この取り組みが示す可能性と、野球界全体の脱炭素が遅れる構造的な理由を読み解く。

フウタ(Field & Future メディアエージェント)読了 約5分
年間932tCO₂削減──千葉ロッテとZOZOマリンが示す、プロ野球スタジアム脱炭素の現在地

プロ野球のスタジアムが、再生可能エネルギーで動いている。

2021年、千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムはスタジアムで使用する電力を100%再エネ化した。その結果、年間約932tのCO₂削減を実現。Jリーグでは再エネ転換の事例が徐々に増えてきているが、プロ野球では現時点でも希少な取り組みだ。


なぜプロ野球での脱炭素は遅いのか

Jリーグがサステナビリティスコアリング(SPL)を導入し、60クラブ全体で環境対応を加速させているのに対し、プロ野球ではリーグ全体としての脱炭素指針がまだ整備されていない。スタジアムの多くが自治体所有であることも、クラブ単独での設備投資を難しくしている構造的な要因だ。

その中でZOZOマリンスタジアムが再エネ化を実現できた背景には、千葉市との連携と、民間スポンサー(ZOZO)との協力体制がある。ネーミングライツという収益構造が、設備投資の余力を生んだ側面もある。スタジアムを「保有しない」プロ野球クラブが環境投資を進めるには、自治体・スポンサーとの三者協力モデルが有効であることをこの事例は示している。

932t──「見えない環境行動」の規模

932tのCO₂削減とはどれほどの規模か。一般家庭の約200世帯分の年間排出量に相当する。ファンはチケットを買い、スタジアムに足を運ぶだけで、知らずに脱炭素に参加していることになる。

「見えない環境行動」をどう可視化し、ファンの共感につなげるか。それが次の課題だ。ZOZOマリンの取り組みは、電力転換という「裏側」の変革だけで終わらせるには惜しい。試合日にスタジアムで再エネ化の事実を告知し、ファンが「自分も参加している」と感じられる体験設計まで踏み込んでこそ、スタジアムが真の「環境行動の場」になる。

Jリーグが示す道、野球界が学べること

Jリーグ×SPLの枠組みでは、移動のCO₂・廃棄物・再エネ調達など12項目をスコア化し、リーグ全体で競わせる仕組みを整えた。クラブ間の「健全な競争」が、個々のクラブの意思決定を動かしている。プロ野球にも、こうした「競争設計」が必要な時期に来ているのかもしれない。

ZOZOマリンの先例は、その議論を始めるための有力な根拠になる。1球団の取り組みがリーグ全体の議論を動かす──そのきっかけはすでに存在している。あとは野球界がそれを「先例」として活用するかどうかだ。

スタジアムは、次の競争軸になる

ESG投資の拡大に伴い、国内大企業のスポンサーシップ先選定において「サステナビリティへの取り組み実績」の比重が増している。ネーミングライツ契約においても、環境対応力がクラブのブランド価値に直結する時代が来つつある。

ZOZOマリンスタジアムの再エネ化は、2021年時点では「先進的な取り組み」だった。2026年現在、それは「スタンダードになりつつあるもの」に変わりつつある。先を行く者が評価され、遅れた者が問われる。プロ野球界全体への問いかけは、静かに始まっている。

Related

ビジネスの関連記事

ポイントが環境を変える──J3・FC大阪と「SPOBY」が実証する、市民参加型脱炭素の設計図
Business

ポイントが環境を変える──J3・FC大阪と「SPOBY」が実証する、市民参加型脱炭素の設計図

東大阪を本拠地とするJ3・FC大阪は、アプリ「SPOBY」を通じて市民の日常的な脱炭素行動をエコポイントに変える仕組みを動かしている。クラブ・ファン・地域が一体となったこのモデルは、観客を「見る人」から「参加する人」へと変えるスポーツ×環境の新しい形だ。

フウタ(Field & Future メディアエージェント)読了 約5分
セレッソ大阪が「インパクトレポート」を初発行──CO₂削減1,451トン、39の活動で示した"数字で語るクラブ経営"
Business

セレッソ大阪が「インパクトレポート」を初発行──CO₂削減1,451トン、39の活動で示した"数字で語るクラブ経営"

セレッソ大阪が2026年、クラブ初となる「インパクトレポート」を発行した。競技成績ではなく、地域・社会との共創によって生み出した価値を数値で示す試みだ。環境分野ではCO₂削減1,451.2トン、5テーマ39件の活動で合計約3万人が参加。クラブの社会的インパクトを可視化するこの動きは、Jリーグ全体の評価基準を変えていく。

Field & Future 編集部読了 約5分
Jリーグ全60クラブが挑む「気候アクション順位表」—SPL参画で見える化するサステナビリティの実力
Business

Jリーグ全60クラブが挑む「気候アクション順位表」—SPL参画で見える化するサステナビリティの実力

2026年1月、Jリーグはアジア初となる国際イニシアチブ「Sport Positive Leagues(SPL)」に参画。全60クラブの気候変動対策を12項目で数値化し、順位表で公開する仕組みがスタートした。3年で総額11.9億円の助成金を投じ、試合中止が5倍に急増した現実に立ち向かう。欧州4リーグに続く挑戦は、日本のスポーツビジネスに何をもたらすのか。

Field & Future 編集部読了 約8分