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全国27カ所でバスケ拠点新設──Bリーグ新アリーナが描く、屋内型脱炭素の設計図

全国65カ所のスタジアム・アリーナ建設計画、うち27カ所がバスケ拠点想定。LaLa arena TOKYO-BAYのZEB Oriented、横浜BUNTAIのCASBEE Sランク、沖縄アリーナのAI制御──Bリーグ新アリーナが切り拓く屋内型脱炭素の現在地を読み解く。

Field & Future 編集部読了 約5分
全国27カ所でバスケ拠点新設──Bリーグ新アリーナが描く、屋内型脱炭素の設計図

全国65カ所——これが今、日本で進行中のスタジアム・アリーナ建設計画の総数だ(東洋経済2025年独自集計)。うち27カ所がプロバスケットボール拠点を想定しているという。Jリーグの「気候変動スコア」導入で注目が集まりがちなサッカースタジアムの脱炭素化だが、その陰でBリーグの新アリーナ建設ラッシュこそが、日本のスポーツ施設脱炭素の次の主戦場になりつつある。屋外スタジアムと屋内アリーナでは、求められる環境設計の論理が根本から異なる。Bリーグ新アリーナは何を設計し、何で競っているのか。

屋内型施設の脱炭素は「空調」が9割

サッカースタジアム(屋外型)の脱炭素議論で中心になるのは、太陽光発電・LED照明・観客の移動交通だ。屋根があるとはいえ大半が外気にさらされるため、空調に大量のエネルギーを使うことはない。一方、アリーナ(屋内型)は構造がまったく違う。1万人規模の観客と選手が密閉空間に集まるため、空調・換気・照明・断熱が建物のエネルギー消費の大部分を占める。

つまり屋内型施設の脱炭素は、建物そのものの省エネ性能──ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証や、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)といった建築物評価指標で測られる領域に直結する。スタジアム脱炭素が「運営の話」であるとすれば、アリーナ脱炭素は「設計の話」だ。

先行3アリーナの設計を読み解く

LaLa arena TOKYO-BAY(千葉ジェッツふなばし):BELS「ZEB Oriented」認証

2024年4月竣工、5月開業。三井不動産とMIXIが運営する1万人収容の多目的アリーナで、千葉ジェッツふなばしの2024-25シーズンからのホームアリーナだ。注目すべきは、設計一次エネルギー消費量を国の基準から30%以上削減し、BELSによる「ZEB Oriented認証」を取得している点。これはZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の4段階評価のうち、大規模建築物向けの省エネ達成段階を示す認証で、1万人規模のアリーナとしては国内でも先進的な水準だ。

横浜BUNTAI(横浜ビー・コルセアーズ):CASBEE横浜「Sランク」

2024年4月開業の横浜BUNTAIは、横浜文化体育館の再整備事業として大成建設らが手がけた。約5,000席のメインアリーナをもち、CASBEE横浜(横浜市版の建築物総合環境性能評価システム)で最高ランクのSランクを取得。省エネルギー性能はBELSでBEI≦0.75(基準より25%以上の省エネ)を達成している。

特徴的なのは、太陽光発電に加えて地熱(地中熱)利用と雨水利用を組み合わせた複合的な環境設計だ。屋上緑化、CO2排出量の削減、再生可能エネルギー利用といった項目を設計要件として横浜市が求めた結果、施設全体としての環境性能が引き上げられた。公共建築主導でSランクを実現した好例といえる。

沖縄アリーナ(琉球ゴールデンキングス):AI制御×太陽光

2021年開業、約200億円を投じた沖縄アリーナは、Bリーグ史上初の「夢のアリーナ」と呼ばれる。3年で来場者100万人を突破した同施設は、環境面ではAI制御によるエネルギー管理システムと太陽光発電を組み合わせた運用が特徴だ。日照時間の長い沖縄の気候を活かし、施設運営コストの削減と環境負荷の低減を同時に追求している。

B.PREMIER参入条件と、アリーナ環境配慮の標準化

2026-27シーズンから始まるBリーグの新たなトップカテゴリ「B.PREMIER」では、ホームアリーナの基準が大幅に引き上げられた。観客席数・床面積・付帯設備など多岐にわたる検査要項が定められており、環境配慮もその設計思想に組み込まれている。福岡では2026年8月着工・2029年3月竣工予定の新アリーナ計画(約6,000席)が動き出し、秋田は2028年秋の県立体育館完成を予定するなど、新規建設・大規模改修の波は当面続く見込みだ。

100億円超の投資を伴うアリーナプロジェクトが20件以上同時進行する状況下では、環境性能は「あればいい」ではなく「ないと建設許可が下りない」レベルの必須要件に近づいている。自治体の建築規制、補助金要件、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)など金融サイドの環境配慮要請も強まっており、ZEB・CASBEE・BELSは新アリーナ設計の事実上の通過儀礼になりつつある。

サッカー脱炭素と何が違うのか──「年間試合数」が生む構造的優位

アリーナ脱炭素にはもうひとつ、サッカースタジアムにはない構造的なメリットがある。それは「試合数の多さ」だ。J1のホーム試合は年間17試合前後だが、B1のホーム試合は年間30試合。さらにアリーナはコンサートやイベント会場としても稼働率が高い。施設稼働日数が多いほど、初期投資した省エネ設備の投資回収(ROI)は加速する。

ZEB Oriented認証で30%の省エネを実現したアリーナが、年間200日以上稼働するなら、その電力削減効果は同じ性能のオフィスビルや屋外スタジアムを大きく上回る。Bリーグ新アリーナにおける環境投資は、感情論ではなく経済合理性の問題として成立しやすい構造を持っている。

屋内型脱炭素のフロンティアは始まったばかり

Jリーグの「気候変動スコア」のような全クラブ横断の評価制度はBリーグにはまだない。だからこそ、アリーナ単位での環境性能設計の差が、そのままクラブのブランド価値・地域価値に跳ね返る競争段階にある。LaLa arenaのZEB Oriented、横浜BUNTAIのCASBEE Sランク、沖縄アリーナのAI制御──いずれも「先進事例」として語られる段階だが、5年後にはこれが「標準」になる可能性が高い。

屋内型施設の脱炭素設計は、サッカースタジアムよりもむしろ「建築物の本気度」が直接的に問われる領域だ。Bリーグ新アリーナのラッシュは、単なる箱物建設ブームではなく、日本のスポーツ施設の環境性能を底上げする最大の機会になりつつある。屋内型脱炭素のフロンティアは、まだ始まったばかりだ。

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