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Jリーグ60クラブの気候行動を「順位表」で競う――アジア初SPL参画が変えるスポーツ経営の未来

Jリーグが2025年4月、気候変動対策を数値化する国際枠組み「Sport Positive League(SPL)」へのアジア初参画を発表した。全60クラブの取り組みを12項目で評価し順位表化する仕組みで、2026年秋には初回スコアが公表される。日本財団から3年総額11.9億円の助成を受け、欧州4リーグに続く世界5番目の参画。天候理由の試合中止が10年で5倍に増える中、スポーツ界の気候対策が「善意の活動」から「データ駆動型の経営課題」へと転換する転機となるか。

Field & Future 編集部読了 約8分
Jリーグ60クラブの気候行動を「順位表」で競う――アジア初SPL参画が変えるスポーツ経営の未来

「順位表」はサッカーファンにとって最も親しみやすい情報だ。その形式で、今度は各クラブの気候変動対策が競われることになる。2025年4月、Jリーグは国際イニシアチブ「Sport Positive League(SPL)」への参画を発表した。欧州4リーグに続く世界5番目、アジアでは初の参画だ。全60クラブの取り組みを12項目で評価し、2026年秋には初回スコアが公表される。背景にあるのは深刻化する気候変動だ。天候理由による試合中止は10年で約5倍に急増。日本財団から3年総額11.9億円の助成を受け、Jリーグは「善意の活動」から「データ駆動型の経営課題」へと舵を切った。スポーツが社会を動かす起点となる、その最前線を追う。


アジア初、Jリーグが踏み出した「気候アクションのスコア化」

2025年4月22日、公益社団法人日本プロサッカーリーグは、国際的なイニシアチブ「Sport Positive League(SPL)」への参画を正式に発表した [1]。これは、イングランド・プレミアリーグ、ドイツ・ブンデスリーガ、フランス・リーグアン、イングランド・EFLチャンピオンシップに続く世界5番目、アジアでは初の参画となる [4]。SPLは2018年に欧州サッカー連盟(UEFA)の環境諮問委員を務めるクレア・プール氏が創設した仕組みで、サッカークラブの気候変動対応を定量的に評価し、スポーツファンに馴染みのある「順位表」形式でスコアを公表することで、各クラブの行動変容を促す設計になっている [9]。Jリーグ全60クラブが参画対象となり、J1からJ3まで全カテゴリーのクラブが同じ評価基準のもとでスコアリングされる [1]。

SPLの評価対象となるのは、試合会場や施設のエネルギー効率、再生可能エネルギーの利用率、リサイクルや廃棄物削減の取り組み、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理、ホームタウンとの連携、選手等への環境教育の推進など、12項目にわたる気候アクションである [2]。これらの活動実績はSPL独自のスコアリングシステムで定量的に分析され、エネルギー、廃棄物、交通といったカテゴリーテーマ別に加重を設けて総合点が算出される [4]。その結果は順位表として公表され、各クラブの具体的な取り組み内容とともに、SPLの公式サイト(登録制)を通じて横断的に紹介される仕組みだ [1]。データ駆動型のアプローチによって環境への取り組みが可視化され、スコアの公表を通じて最善策の共有が促進される点が、この仕組みの最大の特徴といえる [4]。

2025年はSPL参画に向けた準備期間と位置づけられ、JリーグとSPLの間でヒアリングを重ねながら、気候変動対策にとって重要な12項目に関するSPL策定のマトリクスをベースとしつつ、日本独自の評価基準が設定される [1]。並行してJクラブ向けに「Jリーグ気候アクションハンドブック」が2025年6月頃を目途に発行され、一般にも公開される予定だ [4]。2026年1月から正式にエントリーが始まり、2026年の移行期の特別大会までの期間を対象に、各クラブが取り組む気候アクションがSPLへ報告される [1]。そして2026年秋を目途に、SPLより初回となる評価基準に基づくスコアと順位が初めて提示される運びとなっている [2]。

この動きの背景には、気候変動の深刻化による試合運営への直接的な影響がある。Jリーグによると、天候を理由に中止された試合数は1996年から2017年まではシーズン平均で1.86試合だったが、2018年から2024年には9.57試合へと約5倍に急増している [9]。特に「ゲリラ豪雨」による夏場の中止が多く、気候変動への対応は競技運営の継続性という観点からも急務となっている [9]。Jリーグのサステナビリティ領域を担当する辻井隆行執行役員は、「未来の子どもたちが安全にスポーツを楽しむことのできる地球環境を目指す」という理念のもと、SPL参画を通じて「これまでの各クラブの活動を線にして面に変える」ことができると期待を示している [9]。

SPLへの参画は、単に気候アクションに関するスコアや順位を競うだけでなく、ファン・サポーター、メディア、ホームタウン、企業、自治体といったクラブを取り巻く関係者にとって、スポーツクラブの環境への貢献状況や地域特有の環境課題に関する客観的な情報へのアクセスを容易にする [4]。さらに、世界のスポーツリーグと比較した際のJリーグの現在地を確認しながら気候アクションを進捗できるだけでなく、環境負荷を減らすための具体的なアイデアや改善策を、世界の様々な先進クラブから学び生かせるプラットフォームとしての役割も期待されている [1]。この仕組みによって、地域資源を活かしながら脱炭素に向けた活動が広がり、自然環境の保全や再生を推進する地域のハブとして、Jクラブが地域からより信頼される存在になることを、Jリーグは目指している [4]。

「順位表」が促す行動変容――11.9億円の助成金と傾斜配分の設計

Jリーグの気候アクション推進を支えるのは、日本財団による3年総額11.9億円の助成金だ。初年度となる2025年度は3.7億円を投入し、「Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度」を新設した[3]。この制度は、全60クラブに対して1クラブあたり上限400万円、総額2.4億円を均等配分する形でスタートする[6]。各クラブは助成金を活用し、気候アクションのロードマップ策定、再生可能エネルギー設備の導入、廃棄物削減施策の実装など、具体的な取り組みに充てることができる。2025年はSPL参画の準備期間と位置づけられており、均等配分によって全クラブが同じスタートラインに立つ設計となっている[5]。これにより、財政規模の異なるJ1からJ3までの全カテゴリーが、横並びで気候変動対策の第一歩を踏み出せる環境が整った。

2026年秋に初回のSPLスコアが発表されると、助成金の配分方式は大きく変わる。順位上位のクラブにより多くの助成金を配分する「傾斜配分」方式が導入され、気候アクションの実績が直接的な財政支援につながる仕組みが始動する[9]。この傾斜配分は2026年度以降も継続され、3年間の総額11.9億円という枠組みの中で、取り組みの質と速度が評価される構造となる[9]。Jリーグはこの仕組みを通じて、単なる意識啓発にとどまらず、各クラブの経営判断にサステナビリティを組み込むインセンティブを明確に設定した。順位表が持つ「見える化」の力と、助成金という実利が結びつくことで、気候アクションは経営課題として位置づけられることになる。

Jリーグのサステナビリティ領域を担当する辻井隆行執行役員は、SPL参画の狙いについて「各クラブの活動を点で終わらせず、線にして面に変える」と説明している[9]。これまで各クラブは個別にリユースカップの導入やサステナビリティイベントを開催してきたが、他クラブとの協働は少なく、活動が点在していた[9]。SPLのスコアリングシステムを通じて各クラブの強みと課題が可視化されることで、好事例の横展開が加速し、リーグ全体での底上げが可能になる。例えば、再生可能エネルギー導入で高スコアを獲得したクラブの手法を、他クラブが学び応用できる仕組みが生まれる。辻井執行役員は「Jリーグの60クラブ全体で取り組みを加速して、リーグ全体で気候変動に対するメッセージを発信し、ステークホルダーに届けたい」とも語っており[9]、SPLは個別クラブの評価だけでなく、リーグ全体の集合知を形成する装置として機能することが期待されている。

この助成金制度とSPLは、より大きなプロジェクトの一部として位置づけられている。Jリーグは「サステナビリティ事業活性化プロジェクト」を発足させ、2030年までにJリーグ全体でCO2排出量50%削減という目標を掲げた[5][6]。このプロジェクトはSPL導入を含む9つの関連施策を並行実施する包括的な枠組みであり、日本財団の新助成制度を活用しながらカーボンニュートラルな地域社会の実現に向けた取り組みを進める[3][6]。Jリーグによると、天候が理由で中止した試合数は1996〜2017年のシーズン平均1.86試合から、2018〜2024年は9.57試合と約5倍に急増している[9]。ゲリラ豪雨による夏場の中止が特に多く、気候変動への対応は経営リスクとして顕在化している。助成金と順位表という二つの仕組みは、この危機感を全クラブが共有し、具体的な行動に移すための推進力として設計されている。

12項目の評価マトリクス――「再エネ40%」「焼却率50%」の具体的基準

SPLの評価設計は、抽象的な理念を掲げるだけでなく、具体的な到達水準を数値で示すことに特徴がある。評価指標は①ポリシーとコミットメント、レポーティング②再生可能エネルギー③エネルギー効率④環境負荷の少ない移動手段⑤使い捨てプラスチック削減・廃止⑥ゴミの削減管理⑦水の効率的な利用⑧プラントベース・低炭素食品⑨生物多様性⑩教育⑪コミュニケーションとエンゲージメント⑫持続可能な調達の12項目で構成される[2]。それぞれに定量的な基準が設定されており、たとえば再生可能エネルギーについては「クラブが再エネ比率40%以上を目標に取り組むこと」、ゴミ削減管理では「ゴミの焼却率目標を50%と設定」することが明示されている[2]。単に「取り組んでいる」かどうかではなく、「どの水準まで達成しているか」が問われる構造だ。

最も重視されるのが「ポリシーとコミットメント、レポーティング」の項目である。ここではサステナビリティ全体や環境に係る方針・戦略が存在するだけでなく、「Scope1-3の排出量等の客観的な情報を定め公表していること」が要求される[2]。これは事業活動に伴う直接排出(Scope1)、購入電力による間接排出(Scope2)、さらにサプライチェーン全体の排出(Scope3)まで含む包括的な開示を意味する。Jリーグは2026年より法人全体の事業活動に関してScope1・2・3を算定予定としており[4]、各クラブにも同様の透明性が求められる。数値化されたデータの公表は、単なる環境配慮のアピールではなく、第三者による検証可能性を担保する仕組みとして機能する。

施設とオペレーションに関わる項目では、体系的な改善が評価の対象となる。エネルギー効率では「方針・戦略、モニタリング、外部評価実績等を定め、取り組むこと」が求められ[2]、単発の省エネ施策ではなく継続的な測定と改善のサイクルが問われる。使い捨てプラスチック削減では、来場者が利用するエリアからスタッフ専用エリア、キッチン等を対象に「体系的に取り組むこと」とされ[2]、部分的な対応ではなく施設全体での一貫した方針が評価される。水の効率的利用についても「ポリシー等を導入し、実際に水使用量の削減および再利用に取り組むこと」と、宣言と実績の両面が問われる設計になっている[2]。

評価マトリクスで特徴的なのは、運用面だけでなく教育・発信も同等に重視される点だ。教育の項目では「全ての選手(男女、アカデミー選手等)に対して、PR目的ではなく環境の持続可能性・気候変動に関する教育プログラムを実施すること」が明記されている[2]。トップ選手だけでなくユース年代まで含めた体系的な環境教育が求められ、「PR目的ではなく」という但し書きが、形式的な取り組みを排除する姿勢を示している。コミュニケーションとエンゲージメントでは「クラブの公式HP上にサステナビリティのWebページを設置し、ファン・サポーターの環境意識等への行動変化に積極的に取り組むこと」が条件とされる[2]。プレミアリーグでは2023年時点で16クラブがウェブサイトにサステナビリティページを開設しており[4]、情報公開と対話の基盤としてデジタルプラットフォームの整備が標準となっている。

さらに注目すべきは、地域との連携を評価に組み込んだ生物多様性の項目である。「生物多様性に関する方針・戦略を有しクラブ内に限らず地域コミュニティに行き渡らせることで、自然と地域の生態系支援に取り組むこと」とされ[2]、クラブ単体の取り組みではなく、ホームタウン全体への波及効果が評価対象となる。これはJリーグが掲げる「地域との絆」という理念と重なり、スタジアムやクラブハウスの環境対策にとどまらず、地域の自然資本保全にクラブがどう関与するかという視点を導入している。SPLはこうした12項目を「データ駆動型のアプローチにより、環境への取り組みが可視化され、スコアを公表することで最善策の共有を促進し、より高い目標を追求する動機付けが仕組みとして備えられている」仕組みとして設計されており[2]、単なる評価ではなく、継続的な改善と知見共有を促すプラットフォームとしての役割を担っている。

プレミアリーグの先行事例が示す「2040年ネットゼロ」への道筋

英国プレミアリーグは2040年までにネットゼロを達成する目標を掲げ、①自らの事業を気候変動に適応させる、②リーグ全体の脱炭素化を支援し競技を持続可能にする、③プログラムや発信を通じてファンの行動を促す、という3つの優先領域を明確に設定している[12]。この戦略の特徴は、削減目標の数値だけでなく「意思決定や運営にサステナビリティを組み込む」という考え方が前面に出ている点にある[12]。リーグとしての方針が明確になることで、各クラブや関係者――スポンサー企業、自治体、サプライヤー――も同じ方向性で動きやすくなり、個別の取り組みが点で終わらず線として繋がる構造が生まれている。SPLを創設したクレア・プール氏は欧州サッカー連盟(UEFA)の環境諮問委員を務めており[9]、2018年の立ち上げから7年でイングランド、ドイツ・ブンデスリーガ、フランス・リーグアンなど欧州主要4リーグが参画し、今回のJリーグが5番目となった[9][11]。

クラブレベルでは、リバプールFCが2023年に持続可能なイベント運営の国際規格「ISO 20121」をプレミアリーグのクラブとして初めて取得した[9]。この規格は大規模イベントの環境・社会・経済的影響を体系的に管理する枠組みであり、試合運営そのものをサステナビリティの視点で設計し直す意志の表れといえる。一方スペインのラ・リーガでは、各クラブのESG担当者を集めて週8時間もの研修プログラムを実施しており[9]、専門知識の底上げと横断的な情報共有を組織的に進めている。こうした動きは単発の施策ではなく、クラブ経営の中核にサステナビリティを位置づける流れが欧州全体で加速していることを示している。

英国では株主、ファン、政府がクラブに対して環境性や社会性を強く求めるキャンペーンを頻繁に実施しており[9]、グリーンウォッシュ(環境配慮を装う見せかけの取り組み)を排除する動きが社会全体で加速している。その結果、欧州主要リーグの各クラブには「ESG担当者」の配置が進み[9]、専任の責任者が戦略立案から実行、報告までを一貫して担う体制が標準化しつつある。Sport Positiveが公開したプレミアリーグ20クラブの取り組みレポート(2023/24シーズン)は、エネルギー、交通(移動)、廃棄物、水、使い捨てプラスチック、食、生物多様性といった運用領域に加え、コミットメント、ポリシーと報告、コミュニケーション、教育、調達、スポンサーシップといった戦略領域も含めて整理されている[12]。つまり「現場施策(運用)」と「回し続けるための仕組み(戦略)」の両面から、各クラブの活動を俯瞰できる形になっており、他リーグや他業界にとっても参照可能なベンチマークとして機能している。

プレミアリーグの事例が示すのは、リーグ全体の方針と個別クラブの実行力が相互に補完し合うエコシステムの存在である。リーグが2040年ネットゼロという明確なゴールを掲げることで[12]、クラブは自らの取り組みをそのタイムラインに沿って設計しやすくなり、スポンサー企業や自治体もその枠組みの中で協働しやすくなる。さらに、取り組み内容が「順位表」という形で可視化されることで、クラブ間の健全な競争が生まれ、ファンやメディアからの注目度も高まる。Jリーグが今回SPLに参画した背景には、こうした欧州の先行事例が示す「仕組みとしての継続性」と「社会的信頼の獲得」という二つの価値への期待がある。

データ開示がもたらす「信頼」と「差別化」――スポーツビジネスの新局面

2024年のJリーグは、年間入場者数が延べ1250万人を超え、60クラブが日本国土の87%をカバーする巨大なネットワークを持つ[1]。この影響力を背景に、SPL参画によって「各クラブの環境貢献を客観的に評価できる基盤」が整うことの意味は大きい。単一のクラブや試合だけでなく、地域住民、自治体、スポンサー企業、さらには全国のファン・サポーターが、定量化されたスコアを通じて各クラブの気候アクションを把握できるようになる。これは従来の「エコ活動の紹介」とは次元が異なる。透明性と比較可能性を備えたデータ開示が、ステークホルダーとの対話の質を根本から変えるのだ。

Jリーグは2025年6月を目途に「Jリーグ気候アクションハンドブック」を発行し、一般にも公開する予定だ[1]。このハンドブックはSPLの仕組み、12項目の評価基準、活動の進め方を明文化したものであり、クラブだけでなくファン、メディア、地域住民も参照できる。辻井隆行執行役員は「Jリーグ全体で気候変動対応を加速し、ステークホルダーに届けたい」と強調しており[1]、これはクラブが地域社会から信頼を獲得するための戦略的取り組みとして位置づけられている。情報開示の「質」が問われる時代において、定期的に更新される客観的なスコアは、クラブの説明責任を果たす重要な手段となる。

欧州のプロサッカー界では、環境意識の高いファンや機関投資家からの圧力が経営を動かす実例が増えている。イングランド・プレミアリーグでは2023/24シーズンに16クラブがウェブサイトにサステナビリティページを開設し、6クラブが「CO2排出量ネットゼロ」の目標を掲げた[4]。さらにトップ選手がリサイクル推進や電気自動車利用、植物性食品摂取を紹介する動画に出演し、気候アクションへの参画を表明している[4]。こうした動きは単なるイメージ戦略ではなく、クラブの経営にも好影響をもたらしていると報告されている[4]。ファンロイヤルティの向上、スポンサー選定における優位性、自治体との連携強化など、サステナビリティ対応が差別化要素として機能し始めているのだ。

日本でも今後、同様の流れが加速する可能性は高い。Jリーグが公表したデータによれば、天候を理由に中止した試合数は1996〜2017年の平均が年間1.86試合だったのに対し、2018〜2024年は9.57試合と約5倍に急増している[9]。「ゲリラ豪雨」による夏場の中止が目立ち、気候変動はもはや抽象的なリスクではなく、試合運営そのものを脅かす現実だ。こうした状況下で、クラブがどれだけ本気で気候アクションに取り組んでいるかは、ファンにとっても自治体にとっても、そしてスポンサー企業にとっても無視できない判断材料となる。SPLのスコアリングは、その判断を支える透明な基盤として機能し、クラブ経営の信頼性と持続可能性を示す新たな指標となるだろう。

スポーツが社会を動かす起点に――2026年秋、初回ランキングの先にあるもの

2026年秋に公表される初回のSPLスコアは、日本のスポーツ界における気候対策の「現在地」を世界基準で示す歴史的な瞬間となる。Jリーグは2025年を準備期間と位置付け、全60クラブが12項目の評価基準を学びながら取り組みを進めている[5]。初回ランキングは単なる順位表ではなく、アジアのプロスポーツリーグとして初めて国際的な環境評価の枠組みに参画した成果を可視化する機会だ。欧州4リーグに続く世界5番目の参加という事実は、日本のスポーツ界が気候変動対策において「観客」から「プレイヤー」へと転換したことを意味する[5]。このランキングは、各クラブの強みと課題を明確にし、リーグ全体での知見共有を加速させる基盤となる。

JリーグのSPL参画は、他競技への波及効果も期待される。日本のプロスポーツ界では、プロ野球、Bリーグ(バスケットボール)、ジャパンラグビーリーグワンなど、複数の主要リーグが独自のサステナビリティ施策を展開している。しかし、気候アクションを定量的に評価し、国際的な基準で順位化する仕組みを導入したのはJリーグが初めてだ。Jリーグのサステナビリティ担当・辻井隆行執行役員は「好事例を共有できるので、これまでの各クラブの活動を線にして面に変えることができる」と述べており[9]、この横展開の思想は他競技にも応用可能である。2026年秋のランキング公表後、上位クラブの具体的施策が明らかになれば、他リーグにとっても実践的なベンチマークとなるだろう。

気候変動は「将来の話」ではなく、現実の経営リスクとして顕在化している。Jリーグのデータによれば、天候が理由で中止した試合数は1996〜2017年のシーズン平均1.86試合に対し、2018〜2024年は9.57試合と約5倍に急増した[9]。特に夏場のゲリラ豪雨による中止が多く、試合中止はチケット収入の損失だけでなく、スポンサーへの露出機会喪失、ファンエンゲージメントの低下など、複合的なダメージをもたらす。さらに、スタジアムの気候適応(冷房設備の増強、排水設備の強化)には多額の設備投資が必要となり、選手の熱中症リスク管理も年々厳格化している。対策の遅れは事業継続そのものに影響を及ぼすため、SPLへの参画は単なる社会貢献ではなく、リスクマネジメントの一環として位置付けられるべきだ。

読者への示唆として、SPLの評価基準は一般企業のサステナビリティ戦略にも応用可能である。12項目の評価マトリクス(再生可能エネルギー、使い捨てプラスチック削減、持続可能な調達など)は、製造業やサービス業にも共通する課題を含んでいる[9]。「データ収集→可視化→共有→改善」のサイクルをどう組織に実装するかは、業種を問わず重要な経営テーマだ。Jリーグは2025年6月に「Jリーグ気候アクションハンドブック」を一般公開する予定であり[5]、このハンドブックは企業のサステナビリティ担当者にとっても実践的なリファレンスとなる可能性がある。2026年秋のランキング公表後、上位クラブがどのような施策を展開しているかを追うことで、自社の取り組みへの具体的なヒントが得られるだろう。スポーツ界の実践は、ファンという強力なステークホルダーを持つがゆえに、企業よりも透明性と説明責任が厳しく問われる。その緊張感ある環境で培われたノウハウは、一般企業にとっても学ぶべき要素が多い。

Jリーグは2030年までにリーグ全体でCO2排出量を50%削減する目標を掲げており[9]、SPL参画はその中間目標を測定する仕組みでもある。総額11億9000万円の助成金制度[9]は、ランキング上位クラブへの傾斜配分を通じて競争原理を導入し、クラブ間の切磋琢磨を促す設計だ。辻井執行役員は「Jリーグの60クラブ全体で取り組みを加速して、リーグ全体で気候変動に対するメッセージを発信し、ステークホルダーに届けたい」と語っており[9]、スポーツが社会を動かす起点となる可能性を示している。2026年秋の初回ランキングは、その第一歩に過ぎない。その先には、スポーツ界が気候変動対策のフロントランナーとなり、他産業や市民社会を牽引する未来が待っている。


参考文献 / Sources

https://www.jleague.jp/sp/news/article/30781/

https://www.jleague.jp/climateaction/spl/

https://en.nippon-foundation.or.jp/news/articles/2025/20250515-108706.html

https://aboutj.jleague.jp/corporate/pressrelease/article/15508

https://esgjournaljapan.com/domestic-news/45334

https://www.asahi.com/sdgs/article/15733650

https://aboutj.jleague.jp/seasonreview2025/en/sustainability/s_1/

https://www.nikkansports.com/soccer/news/202504220000906.html

https://www.alterna.co.jp/154884/

https://www.chiba-tv.com/plus/detail/2026021260392

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH185YR0Y6A210C2000000/

https://shiodome.co.jp/column/56041/

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